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日语综合教程 第七册 第三课课文

来源:网络收集 时间:2026-08-23
导读: 第3課 ナイン 作者:井上ひさし 放送局での仕事が思いがけず早く終わったので、四つ谷駅(よつやえき)前の新道(しんみち)にある中村さんの店に寄って見た。中村さんは畳屋(たたみや)の主人である。店は小さいが裏手に大きな仕事場を持っている。東京で

第3課 ナイン

作者:井上ひさし

放送局での仕事が思いがけず早く終わったので、四つ谷駅(よつやえき)前の新道(しんみち)にある中村さんの店に寄って見た。中村さんは畳屋(たたみや)の主人である。店は小さいが裏手に大きな仕事場を持っている。東京で五輪大会(ごりんたいかい)が開かれた年の暮れから3年間、私はその仕事場の2階を借りていた。8畳の台所付き食堂に6畳が2間と2畳半、そのうえ広い風呂場と風通しのいいベランダまであって、家賃は月

4.5万円だった。当時の相場の2割方は安かったと思うが、それはとにかくそれほどの間取りを上に乗せる事が出来るぐらい中村畳店の仕事場は大きいのである。その2階にいまは長男の英夫くん夫婦がすんでいる。

中村さんはスポーツ紙を眺めながら、茶筒(ちゃづつ)にいれた煎餅(せんべい)をかじっていたが、私をみると、

「ここへ来て、おやつを付き合ってやってくださいよ」と、針だこで鱈子みたいに膨れ上がった指で火鉢(ひばち)の横の畳を軽く打った。スポーツ紙の見出しに誘われて話題は自然に野球のことになったが、そのうちに中村さんは急にひざを進めてきて、 「新道少年野球団は強かったねえ」

ライオンズもジャイアンツも問題じゃないとでもいうような、力の入った口調で言った。 「なにしろ新宿区の少年野球大会で準優勝したぐらいだからなみの強さじゃなかったな。それも決勝戦を延長12回まで戦ったうえの準優勝だ。つまり新道少年野球団は優勝したも同じさ。大体が優勝チームには投手が3人もいたんだからずるいや。ひきかえ新道には英夫が1人しかいなかった。しかも午前中の準決勝とあわせてぶっ続けで19回も投げ通したんだよ。それも真夏のかんかん照りのもとでの19回だ。英夫も、新道少年野球団も、本当に良くやった」

「覚えていますよ、あの時のことは。ことらの仕事場の2階を借りて二度目の夏のことですから」

「すると、あなたも外堀公園野球場へ詰め掛けてきなさっていた口か。」

「いや、夕方、放送局から戻ってくると、ちょうどパレードにぶっつかったんです。」 上智大学の学生がふえ、近くに大会社のビルがいくつも建ってせいで、道幅4メートル、長さ100メートル足らずのこの新道は四谷(よつや)で一番賑やかな場所になった。もっとも軒(のき)を並べる店は飲み屋に食べ物屋に喫茶店のどれかに限られてしまい、客を迎えるだけの、厚化粧だが、なんだか素っ気(そっけ)のない小路(こうじ)に化けてしまったこともたしかだ。十七 八年前と同じ店構え(みせがまえ)で頑張っているのは、新道入り口のワイシャツ店と、小路の奥のこの畳店ぐらいなものである。当時の新道には生活があった。豆腐屋があり、グラス店が、お惣菜屋が、ビリヤード屋が、そして主人が会社勤めの普通の家があった。四ッ谷駅のほうから新道を抜けようとする人は、ゆるやかな勾配(こうばい)の坂を登ることになるが、その坂の真ん中のあたりには歌舞伎役者の大和屋(やまとや)の住居もあって、夏の宵(よい)などには、白木作り(しらぎづくり)の玄関の前の、狭いが良く打ち水した石畳の上で、大和屋が中学生のお嬢さん二人とよく線香花火をしていた。二人のお嬢さんはやがて良く知られた女優になるのだが、一言で言えば、そのころの新道は自足していたのである。たいていの日用品は新道の中にある店屋で十分に間に合っており、それらの店屋はまた新道に住む人たちだけを相手にして、とにかく暮らしが立っていた。新道は、ささやかにではあるが、しっかりと自給自足しており、そこで小路全体に自信のようなものがみなぎっていた。いまはたしかに華やかな小路になっているけれど、外からやってくる客の懐中をあてにしないとやってゆけないという所が

見えて、なんだか脆い通りになったような気がしてしかたがない。

「主将の洗濯屋の正太郎くんが、小さな、準優勝のカップを抱いて大和屋の前を通るところで、私はパレードに間に合ったのです。正太郎くんの横には英夫くんがいた。その後ろで7人が団子みたいに固まって、くすんくすんやっていた。ビリヤード屋の叔父さんが監督をしていると聞いていたのに、その姿がなかった。あれ、おかしいなと思った記憶があります。

「ビリヤード屋の大将は決勝戦が始まるとする暑気あたりを起こしてひっくり返ってしまったのさ。60を四つも五つも過ぎていたんだから、これは責められない。それにしても監督なしで、あの9人、よくも12回まで持ちこたえたものだ。ほんとうに新道少年野球団はつよかった。」

「大和屋がお嬢さん二人と出てきて、正太郎くんに祝儀袋(しゅうぎぶくろ)を渡した。その光景も覚えていますよ。大和屋が『よくやったねえ、お疲れ様』とねぎらうと、それまでくすんくすんやっていた9人が一斉にわーっと泣き出した。」

「よほど悔しかったのさ。」

「あの9人はいまどうしていますか。もちろん英夫くんのことは良く知っていますが。」 「ばらばらになってしまったさ。」

中村さんはちょっと身を伏せた。

「1塁をやっていた洋品屋の明彦は大学を出て会社員になった。洋品屋は地所(じしょ)を売って千葉のほうへ引っ込んだ。明彦はそこから丸の内の会社にでているそうだよ。2塁のお惣菜屋の洋一は新宿のホテルでコックをやっている。」

中村さんは新道少年野球団のナインのその後の消息によく通じていた。それによると、3塁のガラス店の忠くんはコンピュータ技師、遊撃の文房具店の光二くんは神奈川の中学校教師、左翼の豆腐屋の常雄くんは埼玉で自動車学校を経営しているという。

「この近くにいるのは右翼の魚屋の誠だけかな。誠は放送局の前で小料理屋をやっている。」

「豆腐屋の常雄くんが自動車学校の経営者とは以外でした。あのときはみんな小学校の六年生、つまりいま、やっと30歳でしょう。その若さで自動車学校を経営するなんてすごいじゃないですか。」

「タクシーの運転手をしているときに、そこの社長の娘に見初められたらしいね。で、その社長が自動車学校の経営社でもあったわけさ。」

「なるほど。」

「そういうわけで、皆新道から出て行ってしまったね。ここの地価は高い。三 四十坪の狭い土地でも、処分すれば郊外に家を建てたうえ、びっくりするほどのお釣は老後の資金というわけだね。そうそう大和屋も若葉町のほうへ引っ越したよ。」

中村さんはなぜだか、洗濯屋の正太郎くんの事を抜かしてしまっている。新道少年野球団の4番打者で、捕手(ほしゅ)で、主将の正太郎のことになぜふれたがらないのか。 「正太郎のことは口にしたくないんだよ」

中村さんはこっちの胸のうちを見抜いたように言った。

「あいつの名前を聞いただけで飯がまずくなる。英夫のやつ、あの正太郎のために畳みを85万円分も騙し取られてね、そればかりか、おれが警察に届けようとしたら、『それならばくはこの家をでていきます。』なんて言って脅かすのさ。幼友達をかばうのはいいが、それにも限度ってものがある。」

口にしたくないといいながら、正太郎くんのことに話題が及ぶと、中村さんはそれまで以上に能弁になった。2年前の冬、ひょっこり正太 …… 此处隐藏:5134字,全部文档内容请下载后查看。喜欢就下载吧 ……

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